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ハードウェア開発
- 1: 省電力性能について
- 1.1: 電池運用とバッファ用コンデンサ
- 2: アンテナ実装
- 2.1: 逆F型アンテナの実装
- 2.2: SMAコネクタの実装
- 2.3: ワイヤアンテナの実装
- 3: 信頼性のための検討
- 4: 特殊ピンの取り扱い
- 5: UART-USBケーブルでの書き込み
1 - 省電力性能について
モノをつなぐ無線マイコンモジュールとして低消費電力を実現するためには各処理の消費電流を抑えることが必要ですが、起動時間と処理時間を短縮することも非常に重要です。消費電流が小さくても処理時間が長ければ低消費電力は実現できません。
消費電力(電流)
以下は1パケットを30バイトで送信した時の標準的な消費電流です。
- 標準出力 BLUE-ブルー
- 高出力 RED-レッド
高出力 RED-レッドは標準出力 BLUE-ブルーに比べて送信時の消費電流が大きいですが、処理時間が短いので1パケットを送信時の消費電流は同等です。
TWELITE は低消費電流、瞬速起動、高速処理により省電力を実現しています。
17.0mA
、RED 14.7mA
です。連続受信が必要な場合は常時給電または容量の大きな電池が必要です。消費電力例
TWELITE の消費電力を最小限にした無線タグの例です。この例ではセンサーは使用しておらず、4バイトのIDデータを内蔵タイマーで周期的に送信しています。送信相手からの受信確認(ACK)は行っていません。1パケット送信時の平均消費電流は11.6mA
、処理時間は2.5ms
です。
- 起床中のみ考えた平均消費電流
11.6[mA] * (2.5/1000)[ms] = 29[uA]
- スリープ(RAMオン)時間を含めた平均消費電流
29[uA] + 1.5[uA] = 30.5[uA] = 0.0305[mA]
1秒毎に送信した場合の電池寿命はCR2032の容量を220mAh
として、
220/( 0.0305 ) = 約7213[時間] = 300[日] = 10ヶ月
下のグラフはコイン型電池(CR2032)を使用した場合の電池寿命です。30秒毎にデータを送信した場合の電池寿命は10年を超えます。
1.1 - 電池運用とバッファ用コンデンサ
小容量の電池を使う場合、十分な電流が取れないことがあります。例えば、CR2032 の定格上の電流は 0.2mA
程度で、最大でも 2~3mA
程度しか想定していません。
例えば TWELITEで、無線パケットを送信する場合、瞬間的ですが 20mA 程度消費する事もあり、このとき電流の供給不足、電圧降下などが発生し、システムが正常動作しない事が考えられます。
これを回避するため、バッファ用のコンデンサを VCC-GND 間に接続します。(他にリセットICによる起動制御を行う必要があります)
電源が遮断された場合、電圧3.3V
、平均電流が 10mA
と仮定して、100uF
のバッファーがあれば約10ms
システムを動作できます。電源断直後からバッファーからの電流が供給され、無線モジュールが活動不能になる 2V
近傍までは無線モジュールは動作します。
間欠動作・送信時には有効な手段です。注意点として、再送などが発生した場合は送信完了までの時間が大幅に伸びます。1回の再送で数mS消費しますので、再送の回数分を加味したバッファーが必要です。
ただし受信待ちを行うような場合は連続的に大電流 (17.2mA
) が消費されることになりますから、上記のようなバッファでの対処は難しく、供給能力の高い電池を利用してください。
コンデンサの容量と動作時間の目安
TWELITEシリーズのモジュールの消費電流は、電源電圧に依存しません。電流一定と言う点から、コンデンサの電荷でどの程度の稼働が見込めるか計算してみます。
静電容量 C
のコンデンサに、電圧 v
に相当する電荷が蓄積されている場合、一定電流 i
で電圧 v
から 0
まで降下する時間 t
は t = Cv/i
となります。
電流 i
で 3.3V
から 2.1V
まで降下するのに必要な時間は、C(3.3-2.1)/i
となります。i=10mA
, C=100uF
とした場合、12ms
と計算できます。計算上は 3.3V
で動作していたモジュールの電源が突然断たれた場合、平均電流が 10mA
なら 12ms
稼働延長することが期待できることになります。
電流が
10mA
というのは、あくまでも平均値の仮定です。実際の消費電流の計測値を参照してください。
2 - アンテナ実装
お客様設計の無線回路やアンテナについての認可適用について注意点を記載します。
- 当社により認可を取得し設計情報をお客様に供給する場合
- 当社が提出した認可時の技術情報に従って設計並びに生産を行ってください。
- 当社利用の認可事業者に対してRF回路やアンテナについての技術情報を提出しています。お客様にはこの技術情報に基づいた認可のための必須要件や性能のためのコメントを提示します。
- 認可事業者の見解と異なる見解が存在する可能性があります。万が一、見解の際によって問題が生じた場合は、当社並びに認可事業者は、認可時の技術情報に基づく情報提示を実施しますが、以下については実施しません。
- 当該の交渉を行う、または相当の行為。
- この問題によって生じた補償。
- 海外認可については、お客様自身によって、適合状況をご確認ください。
- 海外認可の要件等は更新されている場合があります。その時点で最新の情報を引用してください。
- お客様の設計・実装について、当社からその是非について最終的な見解を述べることは致しかねます。
- お客様が独自に設計される場合
- ほとんどの場合、独自の設計について認可が必要になります。
- 認可については技術書類等の取り扱いなどをスムーズに行うため原則として当社指定の事業者をご案内します。当社にお問い合わせいただくようお願いいたします。
2.1 - 逆F型アンテナの実装
逆F型パターンアンテナ(TWELITE-SMD-ANT-REVF)の電波認証について注記事項を記載します。
リファレンスデザインを下記にて公開しています。
monowireless/PCB_REF_DESIGN_KICAD: Reference Schematic/PCB design data for KiCAD
要件
以下の条件を満足すること。
- 設計データ通りのパターン、スルーホールにより配線すること
- 設計データ中の変更禁止(配線禁止, DO NOT WIRE)領域を変更しないこと
- 指定のプリント基板であること
- プリント基板製造業者へは 1mm 厚を指定してください
- (1mm 以外の基板厚が必要な場合はこちらを参照下さい)
- 誘電率の関係でガラスエポキシ(FR-4)を指定します。他の材料は不可です
- 層構成は両面または4層です
- レジスト色、シルクの指定要件はありません
- 設計通りの製造・実装であることを確認していること
- 一般的に引用される公差を超える設計のずれが無いこと
- 無線モジュールが実装が適切であること
設計と性能
GND面積
逆F型アンテナは、逆F形状のエレメント部と、モジュール直下のGNDパターンから構成されます。GNDパターンの面積が性能に大きく影響します。最適な大きさは 20x20 ~ 40x40mmです。
配線
逆F型は、外部への配線にも影響を受けやい性質があります。例えば、GND面にコイン電池ホルダーを配置し、外部配線無しといった無線タグ (TWELITE CUEなど) は理想に近い性能が得られます。
GND面に一部配線を行う場合は最小限にとどめてください。例えば1本だけ通す程度であれば、ほとんど影響はありません。
性能評価
認可状況
日本国内
対象モジュール
- TWE-L-WX
- MW-R-WX
要件
上記要件を満足すること
北米 (FCC)
※ 海外認可については、お客様自身により適合性について十分ご確認ください。
対象モジュール
- TWE-L-WX
要件
- 上記要件を満足すること
- その他(表示要件)などは FCC の要件を参照すること
欧州 (EU)
※ 海外認可については、お客様自身により適合性について十分ご確認ください。
対象モジュール
- TWE-L-WX
要件
- 上記要件を満足すること
- その他(表示要件)などは CE の要件を参照すること
その他の地域
認可対応無し。
基板厚について
本設計において基板は FR-4 1mm に指定されています。この基板厚は電波認証での認可の根拠であるため、指定外の基板厚の場合、認可外となります。
ただし、日本国内認可に限り以下の基板厚でも認可されています。
- t=0.5mm (当社で取得済みの海外認可での利用は不可)
- t=0.8mm (当社で取得済みの海外認可での利用は不可)
- t=1.6mm (当社で取得済みの海外認可での利用は不可)
アンテナパターンがt=1mmで最適化されているため、僅かながら特性が変化します。ただし変化は多くの場合ごく軽微です。理想GNDサイズに基づく基板上での特性パターンでは 1~3db 程度変化が見られます。
2.2 - SMAコネクタの実装
SMAコネクタ(TWELITE-SMD-SMA-CONN)の電波認証について注記事項を記載します。
リファレンスデザインを下記にて公開しています。
monowireless/PCB_REF_DESIGN_KICAD: Reference Schematic/PCB design data for KiCAD
要件
共通
- 設計データ通りのパターン、スルーホールにより配線すること
- 設計データ中の変更禁止(配線禁止, DO NOT WIRE)領域を変更しないこと
- 指定のプリント基板であること
- プリント基板製造業者へは 1mm 厚を指定してください
- 誘電率の関係でガラスエポキシ(FR-4)を指定します。他の材料は不可です
- 層構成は両面または4層です
- レジスト色、シルクの指定要件はありません
- 設計通りの製造・実装であることを確認していること
- 一般的に引用される公差を超える設計のずれが無いこと
- 無線モジュールが実装が適切であること
- 指定コネクタを実装すること
指定コネクタ
トーコネ SMA-LR4(Au)
COSMTEC RESOURCES S-037-TGG
https://akizukidenshi.com/catalog/g/gC-02569/
秋月電子通商取り扱い
認可状況
日本国内
対象モジュール
- TWE-L-WX
- MW-R-WX
要件
- 上記要件を満足すること
北米 (FCC)
認可対応無し。
欧州 (EU)
認可対応無し。
その他の地域
認可対応無し。
2.3 - ワイヤアンテナの実装
φ=0.8mm 以下の導線を用いて、アンテナを作成することができます。
任意に折り曲げて使用可能ですが、直立に比べ性能が著しく低下する場合があります。アンテナ性能を維持する場合は「ワイヤアンテナの曲げパターン」をご参照ください。(寸法較差は 0.5mm 未満に収めてください。)
3 - 信頼性のための検討
リセット回路について
始動電圧 (2.05V typ) を超えてからモジュールが起動します。始動電圧から Vhys=38mV 低下したところで再びリセットがかかります。
検討事項は以下の通りです。
- 外部のリセットICにより、より電圧の高いポイントで始動するようにする
- 電源ラインに十分な電圧バッファを設ける
ウォッチドッグ
TWEモジュール内にはウォッチドッグタイマが機能として含まれていますが、モジュールに対する想定外の電磁ショックを受けた場合、モジュールがハングアップする可能性があります。
検討事項は以下の通りです。
- 外部ウォッチドッグハードウェアによる強制リセット
定期的なリセット
システムの長期動作が十分確認できていない状況では、無線システムの定期的に強制リセットすることも検討する必要があります。
検討事項は以下の通りです。
- ソフトウェアにより一定期間ごとにリセットする
- 外部ハードウェアにより RESETN ピンを制御し強制リセットする
未使用ピンの処理
未使用ピンについては、オープンを推奨していますが、ハードウェア設計の考え方によっては以下を検討してください。
- ディジタル関連ピンの外部プルアップ
- アナログ関連ピンのプルダウンまたはプルアップ (半導体データシート中ではオープンを推奨しています)
電源について
よりノイズが少なく安定した電源を推奨します。
- よりノイズの少ないシリーズレギュレータなどの利用
- 電源電圧を 2.7V ~ 3.3V とする
- 乾電池で利用する場合はバッファのキャパシタの利用
- 電源ラインにパスコンを挿入 (ADC ノイズの低減が見られる場合があります)
アンテナ経由での電磁ノイズ
アンテナ経路から電磁ノイズが流入することがあります。
- アンテナ経路に対するサージ防護(別途認証が必要になります)
- 上記外部ウォッチドッグによる強制リセット
各種ノイズ
信号線・マイコン・モータなど周辺デバイスに依存して動作に影響を受ける、または及ぼす場合があります。また無線送信・受信時は、ある程度の電磁ノイズを放射することになりますので他のシステムへの影響も検討することになります。
ホビー等では必要とされる場面は少ないと考えられますが、システム要件によってはこのような検討が必要とされます。
- 専門的な設計検証・検討が必要になります。
ファームウェア
ファームウェアに信頼性を求める場合に考えられる手法です。一般の用途では検討しない項目も含まれます。
以下に、一般的な手法を一部紹介します。
- ハードウェアウォッチドッグの利用 (TWELITE NET ではライブラリ内で半導体内のウォッチドッグを利用します)
- 電圧検出割り込みの利用 (BrownOut 検出)
- 定期的な強制リセット (標準アプリでは実施していません)
- メモリー・変数などの定期的なチェック・多重化 (標準アプリでは実施していません)
- スタックオーバーフローの API の利用
- 始動時にファームウェアのチェックサム検証 (標準アプリでは実施していません)
- 通信の暗号化・冗長データによるチェック (App_UART などの暗号化通信はデータの検証を強化します)
- UART の入出力のチェックサムの強化 (App_UART では xor による 8bit チェックサム)
4 - 特殊ピンの取り扱い
4.1 - 特殊ピンの取り扱い (TWELITE BLUE / RED)
SPIMISO (別名: DO1, 標準アプリ名: PWM3)
本ピンは出力ピンとして利用されることが多いピンですが、モジュール電源投入やリセット時に入力ピンとして振る舞い、その時 Lo 側の電圧判定をされた場合、モジュールがプログラムモードとして起動します。
本ピンの 始動時の電圧 に気をつけてください。
- 標準アプリケーションの場合 (PWM3 — 抵抗 — LED —GND) では起動時に GND 側の不定な電圧を持つことになります。全PWMポートを (VCC — 抵抗 — LED — PWM?) にし、オプションビット (00010000, PWM 波形を反転する) を設定します。
SPICLK (別名: DO0, 標準アプリ名: PWM2)
本ピンは出力として利用されるピンです。 外部からの中間的な電圧印加を行う と(ある程度の出力インピーダンスがあったとしても)、TWEモジュールがプログラムモードに遷移しないといった現象が報告されています。
LEDやトランジスタなどの接続では、始動時やスリープ回復時に中間的な状態となり、正常動作しない場合があります。未接続あるいは Vcc 側へプルアップされる回路構成を推奨します。DIO0 (別名:ADC3), DIO1 (別名: ADC4)
これらのピンはアナログ入力と共用されています。ファームウェア上で注意点としては、AD読み出し時に内部プルアップを無効にしておく必要があります。
ADC2 (別名: Vref)
ADC2 は基準電圧の入力用として利用できます。利用にはソフトウェア上の実装が必要になります。
なお、 基準電圧を出力するピンはありません 。
GNDピン
SMD 版 28, 30-32 ピンの GND は接続を推奨しますが、未接続での運用も可能です。未接続であっても、無線性能の顕著な変化は観察されていません。
5 - UART-USBケーブルでの書き込み
接続方法
プログラムモードで起動する方法
- プログラム信号ピン(7番ピン)を GND に落としながら電源投入またはリセットします。
- プログラム信号ピンを HIGH または OPEN に戻します。